改憲vs護憲を超えて

憲法改正の流れが現実的になった時に、建設的な議論ができますように

今、労働問題を争点にしなければならない理由〜「外交右派・経済左派」の脅威〜

前の記事で今度の選挙の争点を「労働基準法遵守」にすることを主張したが、そもそも労働問題が改善されない背景には、労働運動の低調がある。そして、労働運動の低調の背景のひとつには、労働運動をリードする立場の思想がある。

つまり、「護憲」「反安保法制」「反原発」「反基地」「死刑反対」など、似たような主義主張を持った人たちばかりの集まりとなっていて、「労働問題には興味があるけれど彼らの主張にはちょっと・・・」という人たちから距離を置かれてしまうことがある、ということである。

労働運動側の問題点を考えずに、与党だけの責任を追及するのでは、上手くない。

 

もちろん、それらの主張にはつながる部分もあるだろう。それを根拠に、セットで主張している人もいるだろう。しかし、理解を得られなければ意味がない。

 

そうした現状に対して、たとえば「名も無き市民の会」のような市民団体が出てきて、「外交右派・労働問題重視」を打ち出して積極的に活動している。労働組合を作るという話もあるそうだ。

幸い、彼らはあまりに過激な外交タカ派で、中心人物の藤原興氏はご自身のtwitterアカウントで「ネット右翼大将軍」を名乗るほどの人物だ(2015年11月現在)。過激な主張にはアレルギーを感じる人も多いだろうから、すぐに大きな流れになるとは思わない。

ただ、もし対外的に危機に陥ってナショナリズムが高揚したら、彼らのような過激な主張が大いに脚光をあびることはあるだろう(そして、隣国の状況によっては、そのような事態も充分にあり得ることを考慮しなければならない)。

また、彼らがダメでも、もっとソフトな「外交中道右派・労働問題重視」くらいの理念を打ち出す団体が別に出てきた時に、今の「左派」による労働運動の主体は衰えて行く可能性がある。

 

それでも労働問題が改善されるのであればいい、というのもひとつの考え方であろう。

しかし、彼らの旗印のもとで労働問題が改善されていけば、おそらく、「外交右派・経済(労働)右派」「外交右派・経済(労働)左派」の二大勢力で論じ合う世の中になり、平和教育・平和主義外交・平和憲法を訴える勢力は落ちぶれるだけではないだろうか。

そして左派の衰退が進んでいざ改憲となった時に、護憲派の人権・平和を重視する声はあまりに届かなくなっていくのではないだろうか。

それは、日本の行く末にとっては好ましくない、と少なくとも私は思っている。

 

それが嫌なら、「労働基準法遵守」の旗印を改憲派・右派に奪われてはいけない。

その旗印は、いわゆる天王山だ。与党がその天王山を奪うことができていない一方で、従来の左派もそれを奪えていない。現実として状況の改善を促進するという実績を上げられていないからだ。

その天王山を、今、外交右派・経済左派の団体が奪おうとしている。

この動きを甘く見てはいけない。今は小さなそよ風でも、5年も立たないうちに巨大な台風になることはある。橋下徹が政治に打って出てから大きな渦を作るのに何年かかったというのか。

 

それゆえ、次の参院選で、労働基準法遵守」の具体的施策を第一に掲げて野党が闘わなければいけないのだ。

安保法制を二の次にする勇気を!