改憲vs護憲を超えて

憲法改正の流れが現実的になった時に、建設的な議論ができますように

「護憲派」 🆚「改憲派」〜危機を煽るキャンペーンの競争は、中期的に見れば「護憲派」に不利に働く〜

護憲派」は最近、「戦争法案」のキャンペーンのスマッシュヒットや、一部政治家の失言などに助けられ、一時的に安倍政権への支持率を下げることに成功した。

しかし、中期的に見れば状況は著しく不利であると思われる。勝てない戦いなのではないか、とすら思われる。

 

かつてヒトラーの片腕ヘルマン・ゲーリングは、こんなことを言ったという。

 

「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。(中略)しかし最終的には、政策を決めるのは国の指導者であって、民主主義であれファシスト独裁であれ議会であれ共産主義独裁であれ、国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。(中略)とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ。」

Wikiquote 2015.8.19現在の記事から引用)

 

 

個人的に、この発言は大変説得力のあるものだと思っている。

戦争だけではない。

国民を単純に味方につけたいのであれば、「危機」を訴えればいいのだ。

戦争法案」キャンペーンは、その意味で有効であった。

「戦争になってしまう!」「徴兵制が敷かれるかも!」というのは、国民たちに危機感を抱かせるに十分であった。

もちろん、全く根拠なく主張しても効果はないだろう。しかし、「日本会議」参加メンバーを中心とする自民党右派議員などのいくつかの言動は、そのような将来を想像させるに足るものであり、首相自身の「戦後レジームの脱却」もまた、「戦前への回帰」を思わせるものであるため、危機はある程度現実味のあるものなのである。

 

一方、「安保賛成派」や「改憲派」が振りまく「中国脅威論」キャンペーンは、現状ではイマイチ国民の気持ちをつかめていない部分がある。南シナ海情勢は由々しき問題で、たしかに根拠のひとつになるのだろうが、日本からはあまりに遠い。尖閣諸島についてもそこまでピンとこない国民が多い印象だ(私の個人的印象だが)。

それゆえ、「安保反対派」「護憲派」はちょっとした盛り上がりを見せることに成功した。

 

ところが、それが一時的な効果に過ぎない、というのもまた現実であろう。

なぜなら、中国の海洋進出・覇権主義政策は、(中期的に見れば)収まるものではないからだ。

私個人の予想としては、中国共産党が主導権を握っている限り、国益と保身のために覇権主義は採り続けるだろうが、非理性的な拡大政策に打って出る可能性は非常に少ないと思っている。

ただ、それでも、中国の圧迫感が今よりも増してきたら、「中国脅威論」キャンペーンは護憲平和主義的キャンペーンよりも国民の心をつかむことになるのではないだろうか。

また、自民党の某若手人気政治家が将来首相になった時に、そのブームの中で護憲平和の声などはかき消されてしまうかもしれない。

つまるところ、危機キャンペーンに頼っているだけでは、「改憲」は防ぐのが難しい未来なのである。