改憲vs護憲を超えて

憲法改正の流れが現実的になった時に、建設的な議論ができますように

トランプは悪で、サンダースは善?

アメリカ大統領の座をめぐる争いの中で、トランプとサンダースの躍進が大いに話題となっているが、いずれも、中下層階級の怒りを支持の基盤としていることは、すでに多くの論者が指摘していることである。

 

怒りを持つ中下層階級から支持されるトランプとサンダースとを、前者は悪玉として、後者は善玉として、決めつけて論じるような言説が、とりわけ護憲・リベラル系の側から多いように見受けられる。

それでいいのだろうか。

 

共和党の中で見ても、トランプはたしかにその言動から「いかにも悪そうに」見えるかもしれないが、過激派のクルーズや、ネオコンのルビオが、トランプよりマトモだ、トランプより弱者に優しい、トランプより好ましい政策を実現できる、と言えるだろうか。少なくとも、「左翼」である私には、そうは思えない。

 

今、アメリカで、中下層階級の期待を集めているのが、トランプとサンダースなのだ、ということを、謙虚に受け止める必要がある。

なぜ、トランプが悪で、サンダースが善だと言わなければならないのか。

だとしたら、トランプに踊らされるのはバカな中下層市民で、サンダースに踊らされるのは良識ある中下層市民である、ということだろうか。

そんなこと、どの口が言えるのだろうか。

もし、そう思っているなら、中下層階級の支持を集められる「左翼」にはなれないだろう。

 

サンダースを支持したいという気持ちを持つ中下層階級に対して共感するなら、同じような善意的な共感を、トランプを支持したいという気持ちを持つ中下層階級に対しても持つべきだ。

サンダースに期待する人たちも、トランプに期待する人たちも、賢者でもバカでもない、我々の多くと同じ凡人であるはずだ。

 

日本に置き換えて考えた時に、もし中下層階級からの支持を得たいというのであれば、サンダース的なものを支持したい人たちだけでなく、トランプ的なものを支持したいという人たちからも共感してもらえるような言説を展開しなければならない。

「トランプ」は悪いんだ、騙されるな、あいつは嘘つきだ、「サンダース」が善いんだ、期待しよう、彼は本物だ、と決めつける言説で、中下層階級からの十分な支持が得られるとは、私には到底思えない。