改憲vs護憲を超えて

憲法改正の流れが現実的になった時に、建設的な議論ができますように

靖国神社での爆発事件に思う

headlines.yahoo.co.jp

 

まだ犯人も見つかっていない事件なので、何とも言えないのだが、もっとも気がかりなのは、この事件が特定の民族や、特定の思想に対する排斥に繋がる危険性だ。

 

案の定、と言うべきか、ネット上では、「どうせ隣国が」「どうせ左翼が」という反応ばかりである。しかし、「隣国」「左翼」(つまり、靖国神社や、遊就館の思想に反発を持つ側)にとって、靖国神社のトイレで小規模な爆発をさせることに、どのようなメリットがあるのか、という点について論じている人は今のところ見当たらない。

私自身、護憲派、つまり世の中では左翼とレッテルを貼られる側の人間だが、仮にこれが左翼のテロだとしたら、迷惑だ、ふざけるな、という反応しかしようがない。左翼に対する風当たりが強くなるだけで、何のメリットもないからである。

靖国神社を心から憎んでいる勢力であれば、トイレで小規模な爆発をさせることにはあまり価値がない。強いて言えば、危険だという印象を与えて参拝しにくくする、というメリットはあるかもしれない。しかし、被害者意識を高揚させ、「靖国になんてことを」という日本国民の声を高揚させ、却って靖国を利することになりかねない。世論を右傾化させ、ますます靖国に行こうという気持ちを起こさせることにもなりかねない。

つまり、ネット上で先入観に基づいて「どうせ隣国が」「どうせ左翼が」などと言っている無責任なネット民たちの予想が、万が一、億が一、本当に当たったとしたら、その犯人は、これが逆効果になることすら考え付かないような、相当思考力のない人間だということになる。(敢えて悪意的な言い方をするが)「隣国」「左翼」に関わるような施設やモニュメントで自作自演の爆破事件でも起こして、被害者意識を煽った方が、よっぽど利に適った行動だと言えるだろう。

 

悪意的に世論を動かしたいなら、

①敵を叩きのめしたり、怖気付かせるくらいに被害を与える(ISや、ISに対する交戦勢力がやっていること)

②自作自演でもいいので、小規模な被害を自分側にもたらして、それを理由に被害者ぶって相手を非難する空気を作る(ドイツ国会議事堂放火事件柳条湖事件トンキン湾事件などが思い出される)

のどちらかである。「隣国」「左翼」といった「アンチ靖国」から見て、今回の事件は、そのどちらにも当たらない。

逆に、隣国人排斥」「左翼排斥」を訴える勢力から見れば、②にあたる。つまり、大いにメリットがあるということになる。

だからといって、ただちにそのような勢力による犯行だという予想はしない。それをしたら、「どうせ隣国が」「どうせ左翼が」と言っている無責任ネット民と五十歩百歩の主張になってしまう。

そもそも、人は合理的に動くとは限らないし、単なる愉快犯や、計画失敗などの可能性もあるからだ。

 

しかし、今回の事件の真相がどうであるにせよ、結果的に、隣国人排斥」「左翼排斥」を訴える側にとって追い風になることは間違いない。

 

犯人が見つからず、このような事件がもし今後も続いたら、世の中はどうなるだろうか。日本帝国主義に関わるようなモニュメントや施設で次々と小規模なテロが起こるようなことがあったら、国内は不安で充満するだろう。「隣国」「左翼」はどんどん肩身が狭くなるだろう。そして、それを止める有効な手段はないだろう。

 

だから、声を大にして言いたい。

あなた方は、例えば、ISのテロを見て、イスラーム教徒は悪だから排斥しなければ、という主張をしている人がいたら、支持しますか?

しませんよね。ISはイスラーム教徒の中のごく一部であるということを知っているから。

今回も同じように、理性的に考えてほしい

靖国のトイレに爆発物を仕掛けたのが個人であれ団体であれ、その個人やその団体を憎むことはあっても、その個人や団体が所属するカテゴリ(民族、国家、思想集団など)全体を憎んだら、おかしい、ということを。それは、ISのテロを見てイスラーム教徒を排斥するのと同じくらい非論理的、非理性的なことなのだ、ということを。

 

私は、誓います。もし、これが、万が一、億が一、「隣国排斥」「左翼排斥」を訴える「右翼」側の人間による自作自演の犯行だったとしても、「右翼」全体を憎むことはしません。そのようなことを言い出す仲間がいたら、必ず激しく叱責します。

同じように、万が一、億が一、「隣国」「左翼」の側の人間による犯行だったとしても、「隣国」「左翼」全体を憎むことを、もちろん私はしませんし、あなた方もしないでください。